[ OPENING ]
ここ渋谷道劇では、NEXT STERGE への間合いが早い。
ステージ進行の流れが、息をつく間もなくスピーディー
に進んで行くのだ。 そんな中で渡辺理緒のステージは
始まった。
闇夜を思わせる暗闇の中、渡辺理緒はステージ中央で客
席に背中を向け立っている。右腕を斜め上へとまっすぐ
伸ばし、左腕を斜め下へとまっすぐ伸ばして、背中越し
に息をひそめている客席の人の気配を感じながら・・・

地の底からふつふつと沸きあがって来るようなBGMが、
低く思わせぶりに流れ出す。すると、一筋の光が差し、
その中に一人の素性不明な女の背中が浮かび上がった。
一体この女は何者なのか・・・
人間なのか、もののけなのか、それとも魔界から地上に
舞い降りた、悪魔の使いなのか。しばし様子を見てみる
事にしよう。

天井の低い、ここ渋谷道劇のステージでは、いささか
この演目を演じるには窮屈な感がある。
それは渡辺理緒嬢の被っている羽のおっ立った冠が、
ステージ上を踊りながら移動する際に、ズリズリとたれ
下がっているハリにこすれてしまうのだ。
見ていて私は気がきでは無かった。あの冠からまっすぐ
上へ伸びている羽が、いつかハリに引っかかってしまい
ヘシ折れてしまうのではないか ?! それまで行かなくても、折角の素敵な衣装が痛んでしまうぞと、お客が気にする事では無いかも知れないが、マジで心配だった。

白い女の影は揺ら揺らと陽炎のように揺らめきながら
得体の知れない何者かに感応するごとく、その踊りを
捧げ奉るように続けられている。そして、気持ちが高ま
った所で曲のリズムが変わり、いよいよこの正体不明な
女は、行動を開始する。
冠をはずし、髪をとき放ち、白い装束を脱ぎ捨てると、
ステージ脇に用意されたイスから黒いドレスを手に取り
素肌の上にサラリと羽織った・・・