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もずのわくわく劇場日記 No.147-4-5
★年末特番★ Get's !
2005年 12月17日〜18日 道後ミュージック
渡辺理緒&ゆきみ愛! 夢の競演! チーム”Dreaming Waves”編 Vol.5
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ゆきみ愛は無言のままクルリ! と渡辺理緒に背中を向けた。
思わず渡辺理緒は「待て! 待ってくれ!」と引き止めるしぐさで腕を差し伸べた。
だが、ゆきみ愛は振り返る事無く、白いYシャツの背中越しに
その言葉を冷たく振り払う。
「Oh! My God!」頭をかかえて苦悩する渡辺理緒。
しかし、ゆきみ愛は渡辺理緒の元を去る刹那、渡辺理緒の悶絶する姿を垣間見ていた。そんな渡辺理緒の姿を見るのは、ゆきみ愛にとって身を引き裂かれ、血みどろになって、地獄であえぐ亡者の如き心境であった。
愛する人が悩み、苦しみ、息も絶え絶えにもがいている。出来る事なら今すぐにでも駆け寄り、聖母マリアの慈悲にすがりつき、願わくばこの苦しみをわが身に与え給えと祈りを捧げ、許し請い願いたいと。
けれども、この苦境をあの人自身が、みずからの力で乗り越えてくれなければ、私たちのこの愛はいずれ崩壊し、跡形もなく消えてなくなるのよと、まぶたをギュッ! と閉じてゆきみ愛はカミテへと消えて行った。
ゆきみ愛にひとり取り残された渡辺理緒は、髪を振り乱し、背中をのけぞらせて孤独に耐える。回転する盆の上で胸をかきむしり、もう気を失う寸前と言うところである。
なぜこんなにゆきみ愛の事を愛しているのに、彼女は自分に怪しい光を放つナイフを、胸に突き立てるような事をするのか! やさしく手を差し伸べて置きながら、再び奈落の底へ突き落とすのか! 自分が苦しむ所を見るのが、そんなに楽しいと言うのか? 今のオレがキミの眼にどう映るかだって? わからない! 自分には一体何がどうなってしまったのか、わからない事ばかりだ!
狂おしい自問自答の果てに、疑獄のジェイル(監獄)のプリズナー(囚人)となった渡辺理緒は、手かせ・足かせ、重い愛の鎖に心を束縛され、無意識にそばにあった酒瓶に再び手を伸ばす。
そしてその酒瓶をいとおしそうに抱きかかえ、頬ずりをする。
渡辺理緒の心の弱さが、露呈する。
そして渡辺理緒の心は現実逃避を始めるのだった。
「ちくしょー! この世のすべての人間はオレの敵だ!
死ねばいい・・・ みんな血ヘドを吐いて死ねばいい!」
コブシを握り、絶叫しながら盆の床を何度も叩き、のた打ち回る渡辺理緒。心の弱い人間は、いつも過ちを誰かのせいにする。罪を他人になすり付けるものだ。自分の真実の姿を見ようとしない。それは自分の姿を見るのが恐ろしいからだ。怖いからなのだ。そして現実から逃避を繰り返し、何も解決できないまま卑屈になる。
いつまでもそうして自分を欺き、自分自身を愛せない人間が、生い立ちも、価値観も、夢も希望も違う誰かを愛せるはずは無い。ましてや誰かから愛されるわけは無いのだ。
渡辺理緒は酒瓶を口に運び、酒をあおる。とても苦い酒だと感じた。だが、酒の苦さなんて今はどうでもいい。酔えばそれでこの苦しい現実から逃れられると思った。
だが今夜の酒はいくら飲んでもまったく酔えない。ゆきみ愛のいない孤独は消えないばかりか、ますます重く胸にのしかかって来る。もうどこにも逃げ場は無い。四面楚歌。
「死にたい・・・
死んでこの世から消えて無くなってしまいたい。」
もうろうとする意識の中で、渡辺理緒はそう思った。よろよろと力なく盆に立ち上がった渡辺理緒は、何を思ったのか、自分の頭上に酒の残ったボトルを振り上げ、流れ出る酒を浴び始めるのだった。
それは、ドクドクと容赦なく渡辺理緒の髪に流れ落ち、顔を、肩を濡らし、胸の谷間を伝って盆の床へしたたり落ちる。犬のように顔を振ると、髪の先からしぶきをあげてそれは飛び散った。
気でも狂ったのかと思わせる渡辺理緒の行動は「もうどうにでもなれ!」 と言う、ある意味開き直りとも言えた。ところが、頭に流れ落ちる酒の冷たさが、渡辺理緒の壊れかけた思考回路を冷やし、現実の世界へと引き戻す事になった。
「オレはここで、一体何をしているんだ?
今まで何をしていたんだ? 冷てェ・・・ 冷てぇよ・・・」
グショ濡れになった体が、冷たさを感じている。もう一度酒を浴びてみた。やはり冷たかった。渡辺理緒は「まだ自分にも、この冷たさが感じられるのか、生きてるんだな。そうか! そう言う事なのか!」と、ふと何かに気づいたようだ。
その時、渡辺理緒は背後に人の気配を感じて振り返る。するとそこには自分の恋人だったゆきみ愛の姿があったのだ。黙ったままゆきみ愛は渡辺理緒の姿をじっと見つめていた。
「愛・・・ 」そうつぶやき、渡辺理緒はゆきみ愛の元へ手を伸ばして歩いて行こうとした。しかし足がもつれ、その場に崩れ落ちた。うっ! と低いうめき声。
顔を上げて、すぐそこにいるゆきみ愛の元へ、再び歩いて行こうとするが、足が思うように動かない。
今頃になって酒が効いて来たのかと、思うようにならない足をひきずりながらも、床をはいつくばって、ゆきみ愛の元へ進もうと渡辺理緒は必死にもがいている。
その時、ゆきみ愛が渡辺理緒に右手を差し伸べる! 渡辺理緒は暗黒の闇の中から一筋のまばゆい光が、自分を導いていると感じ、その光をつかもうと、手を伸ばす! 遠い・・・
すぐそばに見えるのに、中々その光りに手が届かない・・・
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■ラストシーン、ラストソング、構成・演出すべて私も知らなかった、渡辺理緒嬢の完全オリジナルシーン。
これは決してお芝居ではなく、渡辺理緒の眼を通して見た、超リアリティーの情景である。
決して事実を描いている訳ではない。渡辺理緒嬢はここに真実を描いているのである。
男と女、愛と言う物の受け止め方、価値観の違い、虚像、夢、現実、ねがい、そしてあるべき姿・・・
それをダンスとパフォーマンスと音楽で巧みに表現し、その真実をこれでもかと言うくらい、強烈なタッチで
深くえぐり、愛するとはどう言う事だ? 愛されるとはどう言う事なんだ?
と渡辺理緒は、私たちに問いかけている。
ゆきみ愛が劇中で、一人思う「この人はまだ、本当の自分自身を取り戻していない?」と言う言葉を思い返して欲しい。これはどう言う意味なのか。これは、渡辺理緒が言った「だが、オレ一人では何も出来なかった!」と言う言葉について、考えているのである。
堕落して行く自分の恋人の姿を見るにつけ、ゆきみ愛は「キッカケ」さえ与えてあげれば、渡辺理緒は自力で立ち直れるはずだと、恋人・渡辺理緒の事を、心底信じているのである。そしてゆきみ愛は、苦労をいとわず渡辺理緒が再起を果たすための「キッカケ」を手に入れた。
これはグランド・アモーレ! 偉大なる真実の愛の姿と言える。そして渡辺理緒は、その「キッカケ」をみずからの決意と行動を以って、見事に再起を果たすと同時に、ゆきみ愛の偉大なる愛に十分に応えた。ところが、そのあとが良くない。自分が復活出来たのは、ゆきみ愛がいてくれたから、すべてうまく行ったと勝手に思い込んでしまった。
劇中のゆきみ愛が言った通り、ゆきみ愛は渡辺理緒を愛するゆえに、信ずるゆえに、ちょっとした「キッカケ」だけを与えた。わずかばかりのお手伝いをしただけに過ぎない。渡辺理緒は自分の力で、再起の道を切り開いた。自分自身に強い自信を持ってしかるべきなのだ。しかし、渡辺理緒は「キミがいてくれたから」と、ゆきみ愛に対して寄りかかって、頼ってしまった訳だ。渡辺理緒がしっかりとした、揺るぎない自分の力と言うものを自覚しなければ、これからも何か起こる度に、ゆきみ愛の事を頼り、自立する事を放棄してしまうのではないか? と、ゆきみ愛は危惧したのである。
またゆきみ愛にとっても、渡辺理緒を一人にして身を隠し、自分自身を見つめなおさせる事、そのための演出は大きなリスクを伴う賭けであったはずだ。渡辺理緒が、また前のように酒びたりの怠惰な日々に、逆戻りしてしまう可能性もある。だが、ゆきみ愛はあえてその大きな賭けに踏み切った。なぜそんな危険な賭けに踏み切れたのか?
渡辺理緒と言う人間を、心底信じていたからに他ならない。仮免許のような安直な「愛」に、自分の大切な一生をあずける事など出来ないからだ。男と女には、「堆積する時間」が必要だ。ホンのささいな事でも、コツコツと積み重ね、物事を熟成させるための、時間と言うものがなければ、インスタントな薄っぺらなものしか、生まれて来ない。ゆきみ愛は渡辺理緒との出会いに「運命の赤い絆」を感じていた。
だからこそ、ゆきみ愛は近道をする事も出来たはずだが、それをしなかった。なぜか?
蜘蛛の糸のような、か細い「運命の赤い絆」では、いつちぎれてしまうか不安で仕方が無い。
どんな嵐が来ようとも、決して切れてしまう事の無い、強い絆を手に入れるためではなかったろうか。
「愛」とは信じる事。そして求め合う事。
さらに! 「真実の愛」とは、お互いに影響しあいながら、人として共に成長し続けられる事。
渡辺理緒とゆきみ愛の演じたチームショーには、あなたへのそんな熱いメッセージが込められている。
あなたもここらでじっくりと、自分自身をもう一度見つめ直してみてはいかがだろうか。
もっともっと、あなたも自信を持って、生きてみても良いのではないかな?
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