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もずのわくわく劇場日記 No.140-1
2005年 6月 10日 川崎ロック座
新庄愛&渡辺理緒 TEAM SHOW!
アンサンブル・ローズ レパートリー Vol.5 「運命の二重奏(デュエット) 」 二つの光の珠(たま)が、いずこからともなく現れ、闇の中を飛び回る。 その二つの光の珠は激しくぶつかり合い、目もくらむような火花を散らしてはじけ飛んだ。 しかし、それぞれの光の珠は砕け散る事無く、何度もぶつかり合いながらも、やがて寄り添い合うようにして溶け合い、一つの大きな珠となった。 これからゆっくりと、この二つの光の珠の物語を語って行く事にしよう。 第一章 第一景 「魔物現る」 琵琶の音響く、うっそうとした木々が立ち並ぶ鎮守の森。 昼なお暗いこの森には魔物が住むと言う。しばしばこの村の人々はその魔物の餌食となり、何人もの犠牲者が出た。その犠牲者のなきがらは、無残に食い荒らされ、手や足の一部だけが無造作に投げ捨てられていると言う、奇怪なあり様である。 猟奇的殺人・・・ いや、そのような生やさしいものではない。とても人間の出来る諸行ではない。それゆえ村人達は、その得体の知れない殺人鬼を称して「魔物」と呼び、恐怖に恐れおののいた。 果たしてこの「魔物」とは一体なんだ? 誰もそれを見た者はいない。 それもそのはず、この魔物を見た者はその毒牙に襲われ、誰一人、生きて逃れられた者がいないのだ。 今夜もまた一人、月の光を頼りに家路を急ぐ村人が、魔物の話に震えながら鎮守の森に近づいていた。 「いやいや・・・ 庄屋様の話は長くて困る。おかげで、もうすっかり陽が落ちて、夜になってしまったわい。こんな時にあの魔物にでも襲われたら何としよう。うぅ・・・ くわばら、くわばら・・・」 この村人は、庄屋の家で開かれた「魔物対策協議会」の寄り合いに行き、その傾向と対策について話をして家に帰る途中だった。この村人は今まで散々「魔物」についての被害の状況と、その手口についての実例を聞き、その恐怖に背筋を凍らせて来たばかりだった。 鎮守の森の入口にそびえ立つ、二本の太く大きな立ち木がある。ご神木と呼ばれる木であり、背い掛かりの高さあたりに、しめ縄がまわされ、その樹齢は数百年と伝えられる古木だ。 そのご神木の根元を一匹の蜘蛛が、地を這いその木に足場を確かめるようにして、ゆるゆると登っていった。 村人は先ほどの寄り合いで聞いて来た話を思い出している。噂話の領域を出ない話だが、 「魔物」は月の晩、どこからともなく風が吹き、鎮守の森の木々がざわざわと揺れた後、身動き出来なくなった人間を捕え、バリバリと頭から食らうのだと言う。 「怖ぇ〜話だよな、人間を頭からバリバリ食うってンだから、とんでもない化け物にちげぇ〜ねぇや。どうでもいいが、今夜はでてこねぇ〜で、もれぇて〜もんだ。」 村人は家路を足早に急ぐ。音も無くどこからか風が吹いて来た。 鎮守の森の木立が風にそよぎ、ザワザワと揺れている。 「おぉ、こりゃ涼しくて助かるねぇ。今晩はどうにも蒸し暑くていけねぇや。」 するとこんな夜更けだと言うのに、うら若き娘が鎮守の森のご神木近くにたたずんでいるではないか。村人は親切心からその娘に声を掛けた。 「もし娘さん、こんな夜更けに一人でどうしやした? このあたりじゃぁ、人を食う魔物が夜な夜な現れると言うから、悪い事は言わねぇから、早くお帰りなすった方がよございますよ。 もし? 娘さん?」 村人はそう言うと、娘の肩をチョンチョンと叩いた。肩を叩かれたその娘は、ゆっくりと村人を振り返る。すると村人は振り返った娘を見て、思わず腰を抜かしそうになる。 「おぉっ!」 村人を振り返った娘は、まるでこの世のものとは思えない程の美しさであった。 緑の黒髪、切れ長の涼しげな目元、キリリ! と紅の注された口元・・・ 村人はその娘の濡れた瞳に今にも吸い込まれそうになり、身動きが出来ない。ぼぉっと立ちつくしていると、娘は小さく「うふふふふ♪」と言う含み笑いをして言う。 「魔物? どんなものか見てみたいでしょ? あははは!」 娘の含み笑いは、こわだかな高笑いに変わっていた。するとその娘は、背後のご神木の高枝へ瞬時に飛び上がり、その手から幾筋もの糸を網のごとく広げ、村人の頭上から投げかけた。 「ひゃぁ〜っ!」驚いた村人は地面にひっくり返り、「お助けを〜! 助けてくれぇ〜!」と悲鳴をあげて、その場から逃げ出そうとする。ところが、逃げようとジタバタ暴れれば暴れるほど、もがけばもがくほど、蜘蛛の糸は体にからまり、身動きが出来なくなった。 「ホホホホ・・・ 今夜の餌食、生け捕った! さぁ〜、もう観念おし! 今からお前をゆっくりと料理してやるから、おとなしくするのだ!」 娘は本性を現した。緑の黒髪はザンバラな白髪に変わり、切れ長の涼しげな目元はつりあがり、キリリ! と紅の注された口元からは、二本の鋭い牙が突き出ている。そして村人を巻き込んだ蜘蛛の糸を、チカラ任せにぐいぐいとたぐり寄せる。村人の体は地面をズルズルと引きずられ、どんどんご神木の木の上に引きずり上げられて行く。 「ほ〜ら、こっちへ来い、こっちへ来い! はははは・・・」 娘だと思ったのは大間違い、娘のなりに姿をやつしたこれこそが魔物! そして魔物の正体は蜘蛛女であったのだ。村人は恐怖のあまり失神して、ぐったりとしている。魔物・蜘蛛女は手元にたぐり寄せた村人を、腕の中に捕え、耳まで裂ける大きな口を開け、村人の頭に鋭い牙を立てて、骨ごとバリバリと言わせて喰ってしまった。 そしてまずい手足を木の上から地面へ捨てると、血まみれになった口元を、着ている着物のたもとでぬぐい、鎮守の森の木の枝から枝へ飛び移りながら、闇の中へと消えて行った。 次回第一章・第二景へ続く |