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もずのわくわく劇場日記 No.141-4
2005年 6月 10日 川崎ロック座新庄愛&渡辺理緒 TEAM SHOW! アンサンブル・ローズ レパートリー Vol.5 「運命の二重奏(ディユエット)」 楽日・ステージレポート第三景 「愛の十字架」 BGM はその隙間を埋めるように、ピアノソロだけが短く流れている。するとボーン♪ ボーン♪ と時を知らせるあの古時計の音が聞こえる・・・ 浜辺に打ち寄せるさざ波の音。 すると遠くから潮風に乗って、ボンゴ、コンガの刻むリズミックな太鼓の響きが、だんだん近くにやって来る。ここはどこだ? ここは、1734年の両シチリア王国。 オーストリア帝国のハプスブルグ家が、ブルボン家のナポリ王国と統一させた島であり、現在のイタリア領自治州である。 時空を飛び越えた二つの魂は、こんな所にもあらわれた。 海風がヒューヒューと、誰かを追い求める呼び声のように吹いている。 ステージに現れたのは、白いサテンのタキシードの男、新庄愛と白いシースルーのドレスを着た、少し悲しげな顔をした女、 渡辺理緒。 二人は手をつないでいるが、どうやらその関係は必ずしもうまく 行っているとは言えないようである。 噛み合っていない心の歯車を、修正するためだろうか、すれ違う 二つの心と心のの間に潮風が吹き抜けて行く。 海岸沿いの広場に出て、二人はダンスを踊りだした。 BGM に女の歌声で、スキャットのメロディーが流れ、その声に誘われるように互いの肩を抱いて踊る。 そうしていると、お互いの気持ちに触れ合う事が出来るのか、二人のダンスは次第にテンポが早くなり、情熱的に我を忘れて二人の世界へと、のめり込んで行くのだった。 渡辺理緒の腰に腕を回し、新庄愛は女の体を確かめるようにして、抱き寄せる。そんな新庄愛の体に身を任せて、応じる渡辺理緒。 次第にお互いの体温を感じ始めると、これまですれ違い、ぎくしゃく として、胸にわだかまっていた何かが、氷が溶けて行くように、いともたやすく融合して一つになって行った。 いや、それどころか、消えそうになっていた愛のともし火が、再び燃え上がり、明るく大きくなって行く。 渡辺理緒は、新庄愛に寄せる信頼と奇跡を信じ始めて行く。 やはり私の魂を救えるのは、新庄愛しかいない。 そう思うと体が火照りだす。 新庄愛は両腕を高く差し上げて、渡辺理緒のわき腹をかかえるように、渡辺理緒も同様に新庄愛のわき腹をかかえるようにして抱き合 った。すると新庄愛は、そのまま渡辺理緒を抱きかかえ、コマのよ うにグルグルと回り出す。 BGM はジャズのアドリブ・ベースが、一心不乱にソロフレーズを かき鳴らし、そのフレーズは、どんどんテンポを上げて早くなっ て行く。 新庄愛も渡辺理緒をかかえたまま、どんどん早く回り出す。 客席から拍手や奇声が沸きあがる。 新庄愛と渡辺理緒は十字型に交差したまま、ずっと回り続ける。 その姿は、「愛の十字架」と呼べるものである。 私は客席からステージで回っている新庄愛と渡辺理緒を、すぐ近くで目の当たりにしていた。 あまりにも新庄愛が早く回っているので、さぞや渡辺理緒の方は大変で、ガッシリ! と新庄愛にしがみつき、目をギュッ! とつむって耐えているのだろうと思い、振り回されている渡辺理緒の事をマジマジと見ていた。 ところがである、良く良く渡辺理緒の顔を見て見ると、渡辺理緒の顔は実におだやかで、そっと目を閉じ、微笑を浮かべるくらいの、優しい表情をしていたのだ。 腕や足も、思っているような力は入っておらず、むしろリラックスして新庄愛に身を任せていると言う方が正しい表現だと言える。 私は渡辺理緒が新庄愛に、しがみついていると思ったのに、渡辺理緒はしがみついているのではなく、新庄愛を横になって抱きしめていたのだ。 そして、目は固くつむっているのではなく、まるでメリーゴーランドにでも乗り、それを楽しんでいると言ったようだ。 この事に気がついた時は、意外だったし、不思議な気持ちさえした。 これは一体どう言う事なのだろうか? 自分なりに色々考えて見た。 普通なら自分が振り回される訳だから、振り落とされないように、新庄愛が「苦しい〜!」と 悲鳴をあげるくらい、新庄愛を絞め殺すくらいに、チカラをこめてしがみつくと思うし、目に 星がチラチラ飛ぶくらい、ぎゅっとまぶたを閉じてしまうと思うのだ。 ところが渡辺理緒は、体のどこにも力は入っていないし、楽しそうに見える。 つまり、心の問題なのである。自分と新庄愛なら、お互いに手放しの信頼関係は成り立っては いないが、渡辺理緒と新庄愛の間には、すでに一体化した信頼関係が構築されている訳だ。 それはもはや信頼と言うよりも「愛」だ! 女と女で愛し合っているに違いない。 グランド・アモ〜レ! 偉大なる「愛」だ! 私も仲間に入れてくれと懇願しても無理か (笑) 「女と女が愛し合う」そう言うとすぐに「レズか」と、勘違いする人がいるかも知れないが、 私が言う「愛」とは、人が人を思いやり、いたわり、そしていつくしむ「人間愛」の事であり それを「グランド・アモ〜レ、偉大なる愛」と呼んでいる。 プロテスタントのキリスト教でも、結婚に結びつかない「同性愛」は神から祝福を受ける事は 無いと説かれているし、生命の光を生まない結婚は、邪悪な堕天使の悪戯と言う事になってい るのである。うん、宗教・哲学でのむずかしい話である。(爆♪) 新庄愛と渡辺理緒は、客席を向いたところで、ピタッ! と止まり、新庄愛が両手を渡辺理緒 から放して、ポーズをする。その姿はまさに「愛の十字架」しかし、この事で二人の男女の 想いが通じ合ったのかと言うと、それはそんなに簡単なものではなかったようだ。 ![]() 渡辺理緒を降ろした新庄愛は、渡辺理緒の手を取ってステージの中央最前部の所で、カミテ側に頭を向けて、そっと寝かす。そして横たえた渡辺理緒の体の上を、手のひらで愛撫するように、くまなく撫でる。 ところが、ハタ! と何かを思い出したのか、その手を止めて、パッ! と立ち上がり、渡辺理緒に背を向け立ち去ってしまう。渡辺理緒はそれに気がつき、上半身を起こして新庄愛の背中を見つめたが、渡辺理緒の事を振り返りもしないまま、舞台装置のシモテ側のキャタツに下がっているカーテンを開け、その中に入って消える。 一人残された渡辺理緒は、ゆっくりと立ち上がると、「なぜなの? どうかしたの? やっぱり私の事を愛してくれないの?」と悲しげなまなざしで、閉ざされたドアを見た。そして渡辺理緒は、ステージから花道を小走りに進み、盆へ向かうが、何かに突き当たって「あぁ・・・」と手を伸ばし、何に突き当たったのか触って確かめる仕草。 渡辺理緒が突き当たった物、それは硬く冷たい石の壁であった。 「あれ?」と不思議に思い、今度は盆から花道を渡り、舞台へと走るが、またしても何かに突き当たり、渡辺理緒は倒れ込んだ。立ち上がって手を伸ばし、触って確かめてみると、そこも硬く冷たい石の壁だった。 ふと気がつくとそこは、岩で囲まれた独房のごとき牢屋であった。そう、渡辺理緒は新庄愛によって、この暗い石の牢屋に閉じ込められてしまったのだった。 渡辺理緒は悲しかった。 二人の出会いは確かに、蜘蛛女とそれを成敗に来た侍ではあったが、決して魂まで魔物になっていたのではない事、時を越えてお互いの魂で語り合い、理解しあい、愛し合えたと信じていたのに、いまだにそれは幻のごとき夢物語だったのかと、落胆したのだった。 しかし新庄愛と二人、抱き合って踊ったあの愛の時間は、真実であったはずだ。 渡辺理緒は一人、そう思いながら新庄愛の気持ちになって考えてみると、彼の気持ちが分ってきたような気がした。新庄愛、彼もまた心の中で一人、葛藤しているのだ。このまま渡辺理緒の事を愛していいのか、あの時、村人達と約束した事を、自分の都合で無き物にして良いのかと。 渡辺理緒はそう思うと、彼・新庄愛の気持ちが理解出来た。 けれど、このまま彼と別れたくない、約束と言う物に束縛された彼の心を解放してあげたかった。渡辺理緒は彼の魂に自由を、そしてもうこれ以上戦う必要はないのよと、言ってあげたいと思った。 渡辺理緒は、舞台セットのキャタツとキャタツの間、つまり四次元空間、時間と距離の観念が無い空間に飛び込むと、時計の針をさらに戻し、新庄愛のあとを追って行くのだった・・・ と言うところで第三景は終わり、舞台は暗転して物語の終章、運命の二重奏(ディユエット)、クライマックスへとステージは進んで行くのでありました! 最終章をお見逃し無く!! いよいよ次回、第四景へと移る! |