もずのわくわく劇場日記 No.142


2005年 6月 10日 川崎ロック座

 渡辺理緒名作ステージ

 「 薔薇の封印 〜THE SEAL OF ROSES〜 」完全バージョン



ステージの床の上をモクモクと這うスモーク・・・

 静かに怪しく聞こえて来るピアノのアルペジオ・・・

  それは物悲しく始まり、しだいに力強く鳴り響く・・・

   そして雷鳴のごとくガーン! と炸裂した!

映画の予告編風に、低音のナレーションで以下は読んで下さい・・・



THE SEEL OF ROSES バンパイア一族の掟を破り

 悪魔に魂を売った男・ミハエル

 荒ぶる魂を封印した薔薇の十字架を破壊!

 世界中に飛び散ってしまった5つの薔薇の花を求め

 邪悪な魂を再び封印するために

 正義のバンパイア・渡辺理緒は立ち上がった!

 川崎ロック座ミュージカル・ゴシック

 薔薇の封印、THE SEAL OF ROSES !




突然暗闇の中からふっ! と水平に突き出された一輪の蒼い薔薇。
黒いサテンの手袋に包まれた何者かの手によって、それは握られていた。

シモテの舞台ソデから唐突に突き出された蒼い薔薇の花と腕は、さらに無遠慮にステージに押し込まれ、やがてその薔薇の花と手の主が姿を現した!


リオ 体を包むパープルスパンコールのコートが目に鮮やかに
 飛び込んで来る! 一体何者か!

 アグレッシヴなサウンドと、光の海の中を泳ぐような
 激しいダンス&パッション、渡辺理緒だ!

 顔の下半分、真っ赤なルージュの口元に怪しい微笑を
 たたえその顔を見せないダンスは、どこかミステリアス

 正義の味方か、それとも悪魔か!

 謎は深まるばかり、目が放せない。
 黒いマントをひるがえし、紫のコートから突き出た足が
 ステージの床を叩くようにステップを踏んだかと思えば
 すぐに蝶のように舞い上がり、
                頭の上にまでまっすぐ伸びあがる。

休むまもなく体をひねってローリングターン!
もしや! もしかしたら薔薇の十字架を破壊し、荒振る魂をその身に宿し、悪魔に魂を売った男・ミハエルなのか!

いや待て! 帽子をとったぞ! どんな顔をしているか見てやろう! おぉ、き、キミは・・・

長い黒髪、まつ毛も長くてタンゴが得意、強気をくじき弱気を助ける、勇気と正義の持ち主。
けれど女は苦手な正義のバンパイア・渡辺理緒ではないか! そうか、そうなのか。

邪悪な魂を再び封印すべく、世界に飛び散った薔薇の花をめぐり、邪悪なバンパイア・ミハエルと戦っているところなのだな? 渡辺理緒の激しいダンスは、きっとそれを再現したものだ!

完璧だ・・・ ため息が出る・・・

「おい! そいつは吸血鬼、バンパイアなんだぜ。ためしにそいつを撃ち殺してみな?
 バンパイアなら決して死なない。ほ〜ら、撃つんだ! 撃ち殺せ!」

うむ実際のステージにそんな声は無いが、私にはそんなミハエルの声がどこからか聞こえる。

するとその時、突然場内に雷鳴がとどろき、稲妻に撃たれた正義のバンパイア・渡辺理緒は、
ハァーッ! と悲鳴を上げるようにして、床の上にうつ伏せに崩れ落ちた。

カミテを向いて横たわる渡辺理緒。じっとしたまま動かない・・・
ずっと動かない。もしや雷に撃たれて死んでしまったのか!

BGMが低くうなるように響き、その音は徐々に大きくなって行く。
とその時! 倒れこんでいる渡辺理緒の黒い手袋の指先がピクリ! ピクリ! と痙攣するように動き始めたではないか。

するとやがて眠りから覚めたように息を吹き返し、けだるそうに立ち上がる渡辺理緒。

「そ〜れ見ろ! ヤツは死んでない。そうだ、ヤツこそ邪悪なバンパイアさ! ふふふ・・・」

またしても私にだけ聞こえて来る悪者・ミハエルの声。(爆♪)

悩む
立ち上がった渡辺理緒は、自分がバンパイアであり、死なない事に、そして
死ねない事に狂おしい苦痛を感じ、頭をかきむしって耐える。
しかし、それがバンパイアとしての宿命なのだ。受け入れるしかないのだ。

「ヤツを捕えろ! 生け捕りにするんだ!」

なぜこの声が私にだけ聞こえて来るんだろう、不思議だ・・・(苦笑)

舞台では見えないけど、いるような演技をする渡辺理緒。
腕を肩の高さに広げ、ひじを上に直角に曲げ、力を入れてバンバン! と張る。
それを数度繰り返す。ひるむ敵に強気の渡辺理緒。
しかし、敵から腕を捕られて、連行されそうになる様子を表現しているのだ。

厳しく攻め立てるバックグランドミュージック。
渡辺理緒はどちらかと言うと、カミテ寄りで踊る。ここでも最後まであきらめず、必死に抵抗を続ける渡辺理緒。一歩づつ立ち止まりながら数歩進む。舞台上の表現方法である。

BGMがイメージを先行する場面であり、敵の厳しい追及をかわし、ともかく振り切って逃げきり、一息ついていると、ここへ来る前に残してきた愛する女の事が、不意に頭の中をよぎる。

「あなたが戦いに行くのなら、私も一緒に連れて行って!」

と泣きながらバンパイア・渡辺理緒にすがりついた女の事・・・
しばし感傷的になったバンパイア・渡辺理緒は、切ない演技でそれを表現する、前半部の見逃せない重要なシーンを踊る。

カミテの端からまるであや取りをするような、滑らかな動きでつま先とカカトを交互に動かし、小刻みに横へ移動する。その様子を引きのカメラワークで見ていると、まるでベルトコンベアーの上に立っているように、ス〜っと水平移動しているように見えるのだ。しかも上半身では、白鳥が羽を大きく広げるように柔らかく腕を広げ、それを胸の前に寄せ、切なく顔をそむけた表情にも、涙を誘う悲哀がよく表されている。

両手を広げ、顔を隠すようにしながらチラチラと隙間を開けては閉じながら、繊細な一連の動作はバレエの白鳥の湖を思わせる。バンパイア・渡辺理緒の心理状態を上手に表現している場面であり、それに続くダンスはBGMの二分音符とシンクロさせた、スチール写真のようなフィックスをうまく使って、曲のエンディングでは、体全体で天から振りかぶるような大きなアクションで、一旦片ヒザついてパッ! と驚きの表情で客席を見てフィックス! ストン!と照明が落ちてフィニッシュとなる。

暗転してる間、観客に一息つかせ、気持ちの準備が出来た所で後半の景が始まるのだ。
間の取り方が絶妙な構成である。

さて、たそがれどきのようなオレンジの照明が舞台を染めると、弦楽四重奏のメロディアスなフレーズが流れ、血の色を思わせる真紅の薔薇の花を、一輪手に持った女がカミテから足取り重く登場して来た。

果たしてこの女は誰だ? 黒いシースルーのロングクローズに、黒く細い羽をえりまわり、スソまわりにあしらったもの。髪はボリューム感のあるセミロングにほどかれ、シューズは黒のエナメルピンヒール、ちょっと厚底系。一目見ただけで情熱的な恋に生きる女と言う感じが伺える。

この女、実はポーラと言う。

正義のバンパイア・渡辺理緒に恋をし、渡辺理緒の秘密を知っても、歌うようにこう言った。


 もし私があなたの恋人になれたなら、何もためらわず全て捧げる
 でも私のヴァンパイアはシャイな人。

 あぁ・・ せめて首にくちづけを、永久の命なんていらないから
 一夜だけでも結ばれたい あぁ・・ 私のヴァンパイア


バンパイア・渡辺理緒が唯一、心を開いて愛した女なのである。このポーラに対して、バンパイア・渡辺理緒は次のように返している。


 もし私が君の恋人になれたなら、何もためらわず全て与えよう
 でもホントのヴァンパイアはシャイなやつ

 あぁ・・ せめて唇にくちづけを、永久の命なんてなくていい
 一夜だけでも結ばれたい あぁ・・ 私はヴァンパイア


愛しているからこそに、ポーラをバンパイアにせずに、「来るな!」と言って残して来たのだ。
後半のステージは、二役やってる渡辺理緒が今度は女役、ポーラとしてステージを踊る。

さてステージはBGM にピチカート・ストリングスのさまよいのテーマが流れ、それが混沌としたフレーズに切り替わってから、ドラムが8BEETを刻み、ポーラ・渡辺理緒の深い悲しみのステージへと進んで行くのだった。

パンパイア・渡辺理緒から独り取り残され、失意の想いをかかえてポーラ・渡辺理緒は、あてどなくステージの上をさまよい歩く。もう彼がどこへ行ってしまったのか知る術はない。今の自分に残っているのは、彼に見立てたこの赤いバラの花だけだ。

手の中に握りしめたバラの花を、ポーラ・渡辺理緒はじっと見つめる。
ぎゅっと握りしめたこの花が恨めしい。渡辺理緒は眉の間にシワを寄せながら、両手を添えてバラの花を大切そうに胸の前に持つ。思いつめた女の情念が、今にもそのバラの花を発火させそうな濃い場面だ。

真っ赤なバラの花を、それにも負けないほど真っ赤なルージュの口にくわえ、渡辺理緒は盆へと進んで行った。そして盆に座り、嘆きのベットが始まる。


ベット ピアノが冷たい雨音のように和音だけのイントロ
 を奏で始める。いよいよ思いあまった渡辺理緒は
 バラの花びらをむしり、それをくちびるに挟み、
 去って行った彼への不満を表現する。

 BGM の歌声は、COME BACK〜! とシャウトして
 観客の胸に鋭いナイフを突き刺す。
 一枚の花びらをくわえたまま、渡辺理緒は
 嫌、嫌!と狂おしく頭を左右に何度も振り、髪を
 乱す。何だか見ていてこちらの方が、胸が苦しく重くなり息をするのもつらいほどである。このバラードとシチュエーションは反則だ・・・


ベット2何枚もの花びらを盆の上に散りばめて、渡辺理緒はポーズする。
とてもじゃないが、いたたまれなくなった観客は拍手で渡辺理緒
を支えると言う状況である。

なぜにここまで切なく踊るのか、そして涙を誘うベットなのか。
こんなベットは渡辺理緒にしか踊れないだろう・・・

この照明もあまりにも美しく、渡辺理緒の姿を浮かび上がらせる。感動とかではなくて、もう正直に胸が痛くてたまらない。


星も見えない漆黒の暗闇の中、強く生きるんだ
海より深いキミの愛を忘れないよ
見返りも求めず生きる事が自由だとボクは知った

いつの日かきっと、五輪の薔薇をすべて取り戻し
陽の光をみる、ボクはキミにそんな自由が与えられる・・・


バンパイアの彼はポーラに言い残し、去って行った。
ポーラ・渡辺理緒は、彼のそんな言葉が胸にあふれて、さらに彼への情熱が、熱く燃えさかっているのか。恋は素敵な人が現れて始まるんじゃない。嫉妬する時、初めて恋だと気付くもの。ポーラは彼を連れ去って行った運命(さだめ)に嫉妬したのかも知しれない・・・


ラスト 渡辺理緒は盆に立ち上がる。
 涙枯れ果て、よろよろと重い足取りでステージへ
 と戻って行く。

 すると客席正面を振り返り、ラストシーン。

 精も魂も疲れ果てた渡辺理緒は、とうとう残り
 少なくなった薔薇の花びらを、絶叫するように
 して乱暴に全部むしり去ってしまうのだった。

 そして遠く両手を差し伸べて訴えかける。

 COME BACK〜!

  私の・・・ バンパイア・・・

 


fine



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