屋根裏談話室

#7 1995年 浅草夏の陣(中編)

こんな真昼間からヌードショーの看板が出ている建物に入って行くと言うのは気が引ける。人目が気になる。現場は確認したので、一旦ここは一時退却して遠くから探りを入れ、周囲の状況を確認し、状況を見定めてから入場する事にした。ぼちぼちお昼だし、まずは何か食って来よう。

と言う事で、食堂があったのでカレーライスを食べて英気を養い、では行くぞ! 浅草ロック座。それにしても人通りが多いな。この状況ではだれにも見つからず浅草ロック座へ入って行くのは無理だと思う。そこで人通りが多いとは言っても通行人の列が途切れる時もあると確認したので、そんなタイミングを見計らって浅草ロック座へ突入する事にした。

浅草ロック座の手前まで歩いて行って、左折で入口に飛び込んで行こうと思う。周囲を見回し、悪く速度を調節しながら進んで行くが、人並みが途切れるタイミングは無かったので、そのまま何食わぬ顔で浅草ロック座の前を通り過ぎる。ダメだったか。しばらく行ってからきびすを返し、再び浅草ロック座の前に到達するが、私の前から女子高生の二人連れが歩いて来る。まさか女子高生の目の前で浅草ロック座に入って行く訳にはいかないので、何食わぬ顔で浅草ロック座の前を再び通貨する。

もう一度方向転換して浅草ロック座の前に到達するも、目の前からにぎやかなオバサマの集団がやって来た。クソ! またしても浅草ロック座の前を通過した。中々良いタイミングはやって来ないので、一旦休憩を取り、気持ちを立て直す事とした。

ふぅ~、私は一体何をしているんだろ? こんな事でストリップ劇場の前を行ったり来たりしている方が、不自然で怪しい人物に見えるだろう。もうここは四の五の言わず腹をくくって、周囲の事は気にせずに浅草ロック座へ突入した方が良いのではないか。大体こんな浅草の街で私の事を知っている人間などいる訳がない。何も恥ずかしがる必要など無いのだ。さも当然のような顔をして、堂々と白昼のストリップ劇場に入って行けば良いのだ

そう自分を説得して今度こそ何があっても、誰が目の前からこようとも見えないつもりで浅草ロック座へ突入するぞ。今度は幸いな事に私に対面して歩いて来るのはお爺さんだけだ。ここぞと言う瞬間は、まさに今だ!

私はやっとの事で無事に浅草ロック座の入口をくぐる事が出来たのだが、ホールは2Fと言う事でチケット売場は一階には無く、その代わり2階へ向かって上がって行く階段があった。劇場の入り口前に今日出演しているのであろう踊り子さんの写真が貼ってあったが、その写真を見る限りどの踊り子も若くて美しい人ばかりのようだ。劇場の建物もビルだし、ホールへ上がって行くための階段の手すりも金色でピカピカ光っている。去年行った山梨の石和のストリップ小屋とは次元の違うものを感じる。

ゆっくりと周囲を眺め渡しながら階段を上って行くと踊り場があり、そこにガラスで仕切られた入口があり、中へ入ったところで入場券を買うシステムのようである。ロビーも広いな、まるで映画館のロビーのようだ。ともかく入場券を購入しなくてはなるまい。チケット売場にいた従業員さんもワイシャツに黒いベスト、黒いスラックスを着ていてまるでホテルのボーイさんのようだ。なんだこの世界観は・・・

「大人一枚。」と言うとチケット売場の従業員さんが笑いながら「18歳未満の人は入れないので大人一枚って言うのは面白いジョークですね。ハイどうぞ。」と言って、入場券とチラシと、番号札を渡してくれた。「あ、すみません、この番号札はなんですか?」と聞くと「まだ開演前なのでモーニングサービス券です。あそこのカウンターでこの券を出してコーヒーと言えば無料でコーヒーが飲めます。有料ですが軽食もありますのでお食事がまだでしたらどうぞ。開演は12時半からです。」と説明を受けた。

さすが東京のストリップ劇場だなぁ、山梨の小屋とは別世界だわ。なんだかすでにこの時点ですっごい楽しい。言われたようにカウンターへ行って無料のコーヒーを飲んで、ホールの中へ入るためのドアを開けた。おぉ~・・・ 客席が広い、天井が高い、舞台も広い、これこそまさに劇場だ! もうこれだけで感動している。

広い舞台の真ん中から花道が伸びていて、その先端は丸い円形のステージになっている。とすると、その円形のステージの正面の席がいわゆる「かぶりつき」と呼ばれる席か。しかし真正面の座席はちょっと気が引けるので、丸いステージの右サイドの座席へ着座する事にした。真正面に座ってまたニンジンや大根が飛んでくると面倒な事になるからな。

浅草ロック座でニンジンや大根が客席へ飛んでくるはずは無いのだが、その頃は浅草ロック座でどんなストリップショーが見られる場所なのか何も知らない頃なので、今から思うと笑ってしまう。何しろ自分の中では去年見た山梨の石和でのストリップが基準になってたから。

(2020.08.11)

#5 1995年 夏・・・

#6 1995年 浅草夏の陣(前編)

#7 1995年 浅草夏の陣(中編)

#8 1995年 浅草夏の陣(後編)