屋根裏談話室

#26 応援さん(1)

劇場の楽日の夜は毎度のごとくごった返している。ただしそれは劇場からストリップ客が帰るまでの事。居残っているのは劇場の常連さんか、踊り子についている応援さんたちだ。その日の終演後、劇場の従業員さんが劇場場内の掃除を始めると、一部の常連さんや応援さんがその掃除をお手伝いする。別に強制されている訳ではなく、また明日も気持ち良く開演出来るようにと、そして素敵なショーを見せてくれてありがとうと言う感謝の気持ちもある。

要は、みんな劇場と言う場所が大好きなのである。だからみんなの遊び場は、みんなできれいにしようと言う事なのである。楽日の場内清掃が終わった後、まだそこに居残っているのは、たいがい踊り子の応援さんである。楽日は踊り子にとって移動日だからだ。

踊り子の応援さんには色々な役目がある。代表的なものは自分が応援している踊り子のショーを盛り上げるためのタンバリンやリボンでの応援活動。踊り子が楽屋入りしていて外出できない時の買い物代行や細々とした用足し代行。踊り子のホームページ制作や管理。そして踊り子が翌週に乗る劇場への送迎と。なぜそんな面倒な事をやっているのかと言えば、すべて自分が応援している踊り子に良く思われたいからだ。

そうは言っても踊り子と応援さんは、お互いに持ちつ持たれつの関係でもある。踊り子は劇場で10日間踊れば、とにかくギャラはもらえるので、ファンや応援さんなどいなくても問題は無いのだが、現実的には自分を慕う応援さんがいる方が、何かと世話を焼いてもらえるので便利なのだ。ただし、応援さんと言うのは何人もいてグループ化しているので、よく内紛が起こるのだ。何人もいる応援さんが、たった一人の踊り子の事を大好きなのだから当たり前だ。嫉妬の嵐(笑)

そうなると踊り子は自分の仕事にも差し障りが起きて来るので、怒り狂い、もめ事を起こしている応援さんを出禁処分にする事もある。それは至極当然な事で、応援ではなく妨害になってしまうので、面倒臭い人は切られるのである。そう言う事が起こりにくくするためと言う訳ではないが、応援さんたちには暗黙の了解として序列がある。暗黙の了解であるから確たるものでは無いが、その踊り子に対する貢献度のようなものだ。

基本的にその踊り子がデビューした頃から、いち早く応援さんとして活動している人が序列第一位である。序列第二位はやはりリボンを投げる人。いわゆる「リボンさん」と言うのだが、この役目を担う人は踊り子のステージの演出の一翼を担うので、高度な技と技術と知識が必要だ。舞台にはカミテとシモテの左右の袖があるので、カミテ側からリボンを投げる人が第一リボンさん。シモテ側からリボンを投げる人が第二リボンさんなどと言い、第一リボンさんはオーケストラで言えば第一バイオリン・バンマスである。

やはり応援キャリアが長く、劇場のサイズや踊り子の使用曲、ステージ運びなどに精通した高度な知識と技術と経験が無ければ勤められない。事前に踊り子から要望があれば打ち合わせの上でリボンを投げる事もある。そして第二リボンさんは次点、第一リボンさんとコンビを組んで左右の舞台袖から息を合わせて舞台へリボンを投げる。第一リボンさんがその日いなければ、ここぞとばかりにカミテ側からリボンを投げる。(笑)

応援さんの序列第三位は、タンバリンを叩いて応援できる人。タンバリンはやはり高度な技術とリズム感、そして場内の空気を読める人である。まず何をおいてもリズム感の無い人はタンバリンを叩いてはいけない。ただ単にヘタと言うだけならカラオケボックスや人気のない畑の真ん中で、徹底的に修行をしたのち、踊り子にタンバリンを聞いてもらって許可が出てからタンバリンデビューする方がベターだ。

どう言う事かと言うと、タンバリンはリボンと違い、自分が応援している踊り子以外にも叩かなくてはならない場合が多い。ヘタなタンバリンでしかも空気読めない人の場合、自分が応援している踊り子がメンツをつぶされる。楽屋でヘタなタンバリンさんがいるけど誰の応援さん? とばかりに自分が応援している踊り子が楽屋で肩身の狭い思いをする事になるのだ。ちなみに私は埼玉の茶畑、農道に停めた車の中で、窓を全部締め切り色々な曲調のCDを流して修行した。(笑)

序列番外編。踊り子のホームページの管理人が、ある意味一番踊り子と近い関係になれる。なぜならば、踊り子が一番信頼を寄せる立場だからである。最近はブログやSNSなど、専門的知識が無くても誰にでも作れるし、踊り子本人が自分で作っている事が多いが、インターネットの黎明期はホームページオンリーであった。ある程度勉強して知識がある人にしかホームページは作れなかったので、ホームページが作れる人は踊り子の一番近くに行けた。

こんなうまい事を言う人がいた。「昔タンバリン、今ホームページ管理人。」好きな踊り子に近づくための手法である。踊り子のホームページなどまだ無かった昔は、タンバリンが叩ければ踊り子と仲良くなれたが、ホームページと言うものが出来てからは、踊り子の信頼を得られるのは、ホームページの管理人をするのが一番手っ取り早い。」と言う意味である。

さらに言うと、踊り子のホームページ管理人をしていると、他の踊り子さんや他の踊り子さんの応援さんにも認知されるので「あぁ、誰々さんとこの管理人さんね。」と何事も話が通るようになる。踊り子さんたちと交流するには良い立場だが、踊り子の看板を背負っているので、好き勝手の無茶は出来なくなる。また嫉妬のバッシングも来たりするので品行方正でいる事を留意しておかなければならない。

いずれにせよ、応援さんと言うグループの中で自分の居場所を確保するには、頭脳と戦略が必要なのである。

(2020.09.06)