屋根裏談話室

#24 仮面舞踏会(5)

もしかしてミナミは優ねーさんに嫉妬してるのか? するとミナミはさらに語気を強めてこう言った。「そう、それならさっき見た私のステージについて感想を言いなさい! 」

「え? キミのステージ? そうだなぁ、全体的な印象としてはキミはキミの持ち味と言うか、アピールポイントを良く心得てると思う。少女っぽさと大人の女性らしさとが、7:3くらいの割合で同居してるって言う不安定で独特な雰囲気を持っているのを自分で気が付いてる。お客さんはそこの不安定さ、弱さをキミに見せつけられる事で、大人の男として守ってあげたいとか? 妙な錯覚におちいっちゃう。それがキミ自身についてね。

でも、そう言う自分の武器みたいなものを上手に見せてるんだから、結構したたかな人ともいえるんじゃないかな。まずオープニング。いきなりセーラー服で登場、大きなクマさんのぬいぐるみを抱えて少女らしさを演出する。ストリップ劇場にセーラー服って言うので、お客さんは無条件で目を引き付けられる。大きなクマのぬいぐるみを、まるで自分のお友達のようにイスに座らせたり、おやつを食べさせたりするようにして、踊りながらしばらく一人遊び。

そんな光景を見せられていれば、お客さんはそのほほえましさに気持ちもほぐれるよね。あの場面のキミは、まだ自分が子供だった頃の事を思い出して演じていたような気がしたな。上手とか下手とかではなく自然体だったから。

すると二曲目では部屋着に着替えるためにセーラー服の上着を脱ぎ、白いブラウスとスカート姿になり、スカートを脱ごうとしかけて誰かに見られてるんじゃないかと、シモテのソデへ一旦消えると言う演出。そして再登場した時には男物の大き目な白いワイシャツを素肌の上に一枚まとっているだけ。先ほどのセーラー服姿のコケティッシュな少女姿から一転した大人っぽいキミを見てお客さんはドキッとする訳だね。

細かい演出だけど、シモテのソデに消えたキミは、口紅の色を変えて出て来た。セーラー服の時は薄目のピンクで少女らしさを出し、白いワイシャツで再登場する時には、きわめて赤に近いショッキングピンクの艶のあるルージュになっていた。それにより顔の印象が、グッと大人の女性らしくなり、白いワイシャツとのコントラストとあいまって、次へ続くベットショーでの準備にもなっている。

なぜそんな細かな演出を考えたのかと言うと、ベットショーでは盆の上に寝そべって踊るので、お客さんとの顔の距離が近くなる。それを意識しての演出だと思った。赤い唇は口元をくっきり見せるし、そこからのぞく白い歯は美しい女を印象付けるからね。すごく良く考えられていると思う。

それなのにだ。キミはまた大きなクマのぬいぐるみを相手にオマママゴト遊びをし、クマさんを抱きしめたまま後ろに倒れると、まるでクマさんがキミにのしかかって来たような錯覚を覚え、キミはあわてて大きなクマさんのぬいぐるみを払いのけるが、何か胸の中にウズウズとした妙な気持ちが芽生え、何となく自分の胸を白いワイシャツの上から触ってみる。するといつの間にか自分の胸のふくらみが少し大きくなっていた事に気づく。

そこから先は感情のおもむくまま、自分の両足を広げて大切な所を刺激して果てた。そこまでの内容が濃厚なので、ベットからの立ち上がりでは、手短に済ませて本舞台に戻り終了。客席にはセーラー服姿のキミと、大人びたワイシャツ姿のキミが残像として残り、まるで少女が大人の女になって行く過程を想像させ、視覚的なものよりも精神的な想像力を書き立たせられる作品として出来上がっていたと思う。

可愛いだけのアイドル踊り子のステージとはとても思えず、どこからどこまでも逐一良く計算されたステージでした。ベットの時ウィンクして挑発されていた事には、まったく気が付きませんでした。そんな感じかな。はははっ。」

私の見たステージの感想をじっと黙ったまま聞いていたミナミは、2、3回静かにうなづいてから冷めかかったパスタをフォークに巻き取って一口食べてから言った。「優ねーさんが言ってた事、ホントだった。それにしても口紅の色を変えたところにも気が付いていたのかぁ。誰もそこの所に気が付いたお客っていなかったので驚いた。少女から大人の女へって言うのがあの作品のテーマだったのよ。私はチョッキーが眠そうな目でステージを見てたから、私のステージには興味が無いのかなって思ってたよ。」

「いや、キミのステージに興味がないなんてそんな事はないよ。どの踊り子さんのステージもちゃんと見てるし、みんな個性的で楽しかったね。眠そうにしていたのは今日の四回目だったんで、少々疲れてたんだと思う。」

「そりゃそうでしょうよ、あんなに細かいところまで真剣に見ていたら疲れると思うわ。でも感心した。驚いた。チョッキーみたいなお客さんもいるんだね。」

私みたいなお客さんてどう言う事だろうか。

(2020.09.03)

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