屋根裏談話室

#2 時は来た! 初めてのストリップ小屋で見た世界(前編)

私が長い事見て来た深夜番組の「ストリップの世界」

元祖アイドルストリッパー「美加まどか」が全盛期の頃は年齢的にストリップ小屋へ行く事は出来なかった。しかし高校受験の時期を向かえ「オレ勉強するから一人にしてくれ」と親に言って、受験勉強を口実に家族が寝静まった深夜、茶の間のテレビに3メートルもある長いコードのイヤホンを突き刺して深夜放送を楽しんだ。今のようにテレビは一人に一台と言うのが当たり前な時代ではない。テレビは高価な家電であったので、一家に一台と言うのが普通であった。

美加まどか嬢が舞台の花道の上で御開帳しながら右手で股間を覆い、パタパタとうちわで扇ぐように女体の神秘な部分をお客に見せたり、見せなかったりしながら男のスケベ心を煽り倒して挑発する。

今「女体の神秘な部分」と書いたが、それは私は女体のその部分を見た事が無かったのでそのように書いた。文字通り「女体の神秘」である。

武田鉄矢が青春時代の思い出話をテレビの中で話していた事がある。

世に「カップヌードル」と言う、カップに熱湯を注いで3分待つだけでラーメンが食べられると言う画期的な商品が発売されて話題になっていた。武田鉄矢は「カップヌードル」ではなく「カップヌード」だと大真面目に記憶して友人たちと共に「カップヌード買いたかねぇ~!」と、悶々としていたと言う。

ある日いよいよお小遣いが溜まり、あの憧れの「カップーヌード」を商店で購入できたが、フタを開けてみると麺が入っていた。これに熱湯を入れて3分待てばアラジンの魔法のランプのように、カップの中から湯気が立ち込め「ヌード」が出てくると思っていたそうだ。しかし青少年の淡い夢は湯気と共に消え失せた。

私は武田鉄矢の事を笑えない。なぜなら私も「カップヌード」だと思っていたからだ。ただ、私の場合はカップのフタを開けるとそのカップの中に、仮面ライダーカードのようなヌード写真が入っているものだと思っていたのだ。であるから、なぜカップに熱湯を入れて3分待たなければならないのか合点がいかなかった。

1994年秋。

時は過ぎ、学校を卒業して社会人となった私に天から降ってわいたような出来事が起きた。会社の慰安旅行である。慰安旅行と言えば宴会が付き物である。お酒はまだあんまり飲めなかったがこれも仕事のうちである。

日頃は職場でマジメそうな顔をして働いている諸先輩方も酒を飲めば豹変する。通常夜の9時になれば宴会は終了するものである。そうなると二次会として旅先のスナックなどへ仲の良いもの同士のグループで流れて行くのだが、私と仲の良い諸先輩グループはストリップでも見に行こうやと言う話になった。何ッ!

一旦各自の部屋へ戻り、宴会で着ていた浴衣を脱ぎ捨て私服に着替える。そして一階のロビーに集結。いよいよ諸先輩に紛れて幼い頃から夢にまで見ていたストリップ小屋へ、本当に行くチャンスがめぐって来たのだ。

山梨県石和。

川っぺりの道をゾロゾロとみんなで歩いて行くと「ヌード」と書かれた看板があった。「ヌード」。何と言う甘く切ない言葉であろうか。もうその言葉だけで甘い香水の匂いが鼻先へ広がって行く心持になるではないか。

諸先輩方はすでにそのあたりの社会勉強は出来ているのか落ち着いたものである。しかし私は初体験、テレビで知識だけは先輩方にも負けないくらいあると自負していたのだが、実際に本物の女の裸は見た事が無い訳で、胸の高鳴りが抑えきれずに爆発寸前である。とうとう本当にストリップ小屋まで来た、入場料を払ってあのドアを開ければ、もしかしたら美加まどかが踊っているかも知れない。いや、こんな所に美加まどかがいるはずはないよなと自分を納得させる。

私が知らない世界。

私は窓口で普通に大人一枚と入場券を買ってすんなりと場内へ入るもんだと想像していた。ところが、ストリップ小屋の入口の前で怒鳴り声とダメダメ!と言う男たちの声がする。何が始まったんだとその方向へ目を向けると、先輩のオジサンが小屋の従業員と悶着を起こしているではないか。

端折って説明すると、○○旅館の団体客なんだから、団体割引で一人当たり二千円にディスカウントしろと言うが、小屋の従業員はあくまでも一人三千円だと突っぱねる。つまり値段交渉をしていたのだ。

さんざんまけろ、まけねぇと堂々巡りのやり取りの末、じゃぁ、中を取って一人頭二千五百円と言う事で騒動は収束した。確かに先輩オジサンの功績は認めるが、ストリップ小屋の入口の前で、あんなに大声出してまで値段交渉しなくてもと私は苦笑した。みっともないったらありゃしない。

(2020.08.05)

#2 時は来た! 初めてのストリップ小屋で見た世界(前編)

#3 時は来た! 初めてのストリップ小屋で見た世界(中編)

#4 時は来た! 初めてのストリップ小屋で見た世界(後編)